環境問題・エコロジー講演会/宮崎学

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アニマルアイズ動物の目からみた環境問題

私たち人間は、一方的に自然を見ている部分が多すぎる。

これを、生き物たちからの視線に変えて環境をみてみれば、そこには大きな発見がある。

自然界は、黙して語らないけれども、実は雄弁に語ってくるからだ。


午前9時30分。人々がたくさん訪れる遊歩道をツキノワグマの親子が通り過ぎていった。

ここに、もし、人間がいたらきわめて危険な状態だった。

なぜならば、この親子グマが出現しはじめて4日間ほど、無人カメラが連日叩き倒されていったからだ。


北海道で原野を見下ろす展望台駐車場に、キタキツネが擬木フェンスに乗ってサーカスをやっていた。

これも、観光客から餌をもらうためのパフォーマンスなのだが、だれに教わることもなく自ら考案した芸風には感心してしまった。


日本全国の地方にいけば、家庭生ゴミはこのようにコンポスターに入れられて処理されていることが多い。

そんなところは、近隣の野生動物たちにとってはご馳走の香り漂うレストランだ。

家人の隙を狙って日夜キツネやタヌキがやってきていることは、案外気づいていないものである。

これら動物たちは、残飯の内容によって各家庭の「台所事情」まで知り尽くしているのが面白い。


外来動物のヌートリアの親子が、ため池のほとりでひっそりと食事をしていた。

背景のマンションには、過疎の村がひとつ入ってしまうほどの人口が暮らしているが、ここのヌートリアの存在にはまったくの無関心者ばかりだった。

自然界と人間界の心のかい離を見る思いがした。



エゾシカの巨体が交通事故に遭って横たわっていた。

乗用車ならまちがいなく大事故につながり、重大事態となるところだ。

近年の日本社会では、大型野生動物が増えてきており、このような事故例も確実に増加してきている。


人口の密集する都会では、クマネズミはこのように隣家に移動するにも電線を伝わっていくものが増えてきている。

これは、人間社会をたくみに観察したうえでの行動であり、野生動物たちが確実に賢くなって変化していることをうかがい知ることができる。


野生動物たちは、時代とともに人間社会を学習して自分たちの生活態度にも反映させている。

一般車輌の通行制限をされている山岳観光道路は、定期バスしか通らないことを知っており、野生ザルはこのように道路を絶好の憩い場所にしていた。


千葉県の房総半島には、台湾原産の小型のシカの仲間であるキョンが大量に野生化してしまっている。

こうなってしまったのも、このキョンを移入した業者の不始末でもあるし、それを放置してしまった行政の怠慢にも関係している。

もはや、増えすぎたキョンを房総半島から撲滅することは不可能であろう。

そして、やがて利根川を突破すれば、東北地方にひろがる無尽蔵の山野にキョンがはびこる可能性は充分にある。


近畿地方にある公園の池は、水鳥たちの楽園となって市民の憩いの場所にもなっている。

そこに、ヌートリアも住みつき、一部市民のアイドル的存在でもある。

そんなヌートリアと市民感情を同時観察すれば、今日の日本人の自然観が見えてくるから面白い。



カイセンダニという「ダニ」が野生動物にもかなり蔓延していることは知られている。

この大きなイノシシも、首から頭部にかけてすでに罹患している。

このあと、あまりの痒さにこのイノシシの精神状態が平常に保たれればいいが、もし一歩狂いが生じれば人間に襲いかかってくることだってあろう。


東南アジア原産のハクビシンは、いまや全国的に分布をひろげ、農業現場ではかなりの被害を出している。

木登りが得意なので、人家やホテルのような壁でも平気で登ってしまう。

そして、天井裏にも住みつき、大量の大小便を撒き散らす被害も出しながら人々の恨みもかいつづけている外来動物。




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